川内原発の一時停止について技術者倫理に基づく見解

原子力規制委員会において、川内原発の一時停止について技術に対して真摯に検討・議論することを求めるブログです

アゴラ石井孝明さん「川内原発、停止の必要なし−リスク認識の誤り」に対する私の見解

稼働継続に賛成されている方が、アゴラの石井孝明さんの記事を論拠にされていることが多いので、私なりに問題点の反論をしておきます。

(1)「川内原発のリスクは現時点では極めて小さく」とありますが、18日の原子力規制委員会において、川内原発付近の断層の活動リスクが高まったか否 か、再稼働に用いたモデル式が今回の地震と照らし合わせて妥当か否かと言った将来リスクに対しての検討は一切なされていません。あくまで、今起きている地 震に対して、川内原発は安全だと言っているだけで、それは私も重々承知しております。
(2)「重大事故の確率を、100万炉年に1の割合にする。」とありますが、現状の地震の発生状況を鑑みれば、事故の発生確率は平均化された想定確率より 高い状況にあると思います。川内原発付近の断層の活動リスクが高まっていないと科学的に結論付けられるのであれば問題ないと思っていますが、それは悪魔の 証明(実質証明不可能)かと。
(3)「新規制基準では南海トラフ(トラフ:海底の巨大な溝、地震を引き起こす場合有り)が動いた上に、連動して沖縄近辺トラフが動くというあり得ない想定で 試算し、550ガルで対策すると決めた。」とありますが、550ガルという数値は、川内原発直近の断層の地震による加速度であり、南海トラフ+沖縄近辺ト ラフの地震については、確かに検討がなされていますが、検討の結果、長周期振動についてのみの考慮を行っています。最終的な基準地震動660ガルは、「存 在が分かっていない活断層による地震」を想定し、北海道留萌支庁南部地震を参考に決められています。(NHKサイト参照)
(4)「九州南部には、北部と違って大きな電源がない」については、私自身も原発を停止した際の最大のリスクであると思っています。九州全体でみれば、火 力発電所のフル稼働・関門連絡線のフル活用・工場内発電所からの電力融通で賄えると考えていますが、南北九州を結ぶ送電線がもし今後の地震により機能不全 になったならば、原発停止により大規模な停電が予想されます。南北九州送電線の分断リスクも踏まえた上での議論は必要と思っています。

ちなみに、経済ジャーナリストである石井孝明さんが、なぜここまで明確に原発停止の必要はないと言い切れるのか、技術者の私にはよく分かりません。逆に、 専門外の技術者である私には、絶対に止めるべきとは言えません。止めるかどうか真摯な議論をせよということと、規制委が議論していない技術的課題を指摘す ることが、私の技術的限界と思っています。
日本技術士会の倫理綱領にもこう示されています。
3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。
ですから私はまず初めに、原発を停止することによるリスクを自分なりに洗い出し、それらについて納得した上で、現在の行動をし始めた次第です。

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