川内原発の一時停止について技術者倫理に基づく見解

原子力規制委員会において、川内原発の一時停止について技術に対して真摯に検討・議論することを求めるブログです

川内原発について原子力規制委員会のこれまでの公式な議論時間はわずか20分

4/18の会見では、田中原子力規制委員長は、川内原発の一時 停止について「科学的根拠がなければ、国民や政治家が止めてほしいと言ってもそうするつもりはない」(毎日新聞)という趣旨の発言をしています。規制委コールセンターからも「技術的議論は尽くした」という回答を得ています。
しかし、原子力規制委員会のこれまでの公の対応は以下のとおりであり、今回の地震を受けた近い将来のリスクについて、科学的根拠に基づいた真摯な議論が行われたとは到底言えません。我々は、迅速かつ真摯な議論を求め、声を上げる必要があります。
 
【熊本地震発生後の時系列 ●規制委の対応、○規制委以外の事象
○4/14(木) 21:26 熊本地震(前震)発生 M6.5 深さ10km
○4/15(金) 防災科学技術研究所益城観測点(震央から11km)における観測結果を公開
  揺れの規模を示す加速度(単位:ガル)の観測結果は、地表面での加速度1580ガル、硬い岩盤に埋め込まれた地下地震計で260ガル程度という揺れを観測 (いずれも3軸合成値)。地下地震計の値を、基準地震動と同じ前提である解放基盤表面はぎとり波に換算すると約2倍となり、520ガル相当の地震であった ということになります(長沢啓行名誉教授計算)。川内原発の基準地震動は、水平で620ガルですから、これに近い揺れが観測されたということです。
 (※なお正確には、水平基準地震動と比べるべきは水平2軸合成値の実績だと思われますが、未発表です。)
○4/16(土) 1:25 熊本地震(本震)発生 M7.3 深さ12km
○4/17(日) 防災科学技術研究所益城観測点における観測結果を公開、地表面で1362ガルを記録
●4/18(月) AM 熊本地震を受けて初めて原子力規制委員会臨時会議を開催
  総時間40分弱、うち質疑時間は20分弱と極めて短く、その内容も今のところ安全であるという確認がほとんどで、今回の地震を踏まえた将来のリスクに対す る議論は、「もし現状動いている布田川・日奈久断層帯がすべて動くM8.1の地震でも、従来の計算上は大丈夫」という議論だけでした。なお、発表済の実績 データに基づく議論や、川内原発付近の断層が動くリスクの高まりについての議論は一切行われていません
●4/18(月) PM 原子力規制委員長記者会見において、4/15に出された観測結果に基づいた基準地震動の見直し等について質問があり、田中委員長からは「今のところは基準 地震動は維持する」、小林長官官房耐震等規制総括官から「観測結果について今後詳細な分析をする」という旨の回答がありました。
○4/19(火) 17:52 川内原発により近い八代市でM5.5(震度5強)の余震を観測
○4/20(水) AM 原子力規制委員会の定例会議を実施
 震源の南西方向への移動が生じたにもかかわらず、川内原発に関する議論は一切なく、予定通り高浜1・2号機の再稼働について議論が行われたのみでした。
●4/21(木) 原子力規制委員会コールセンターに問い合わせた結果、「実績データの分析はまだ終わっていない、いつ終わるかもお伝えできない」との回答を得まし
○●4/22(金) PM 原子力規制委員会に、大阪府立大 長沢啓行名誉教授が資料室室長を務める若狭ネットから、川内原発の運転中止などを求める緊急申し入れが行われました。
 
【若狭ネットからの緊急申し入れ内容】
結論部のみ転載します。技術的内容について詳しくは、若狭ネットの当該記事(4/22付)をご覧ください。

http://wakasa-net.sakura.ne.jp/www/

1.2016年熊本地震を踏まえると、M6.5の地震川内原発周辺または直下で起きる可能性を否定できず、その場合には川内原発のクリフエッジ (注:安全限界)を超えて炉心溶融(注:メルトダウン)事故が起きる危険性もあることから、九州電力に対し、川内1・2号の運転中止を命令して下さい。

2.益城観測点のM6.5の地震に対する地下地震観測記録はぎとり波の応答スペクトルが川内1・2号の基準地震動を一部超えることから、設置変更許可の前提が崩れたことは明らかであり、即刻、設置変更許可を取り消してください。

3.益城観測点の地下地震観測記録のはぎとり波によれば、今の耐専スペクトルや断層モデルによる地震動評価では過小にすぎることが明らかであり、最 近20 年間の国内地震データに基づいて地震動評価手法を根本的に改定し、新しい地震動評価手法で基準地震動を策定し直してください。